ミロコマチコさんの神話的な世界
東京都美術館で「大地に耳をすます」という展覧会を見てきました。ミロコマチコさんの作品が素晴らしかった。はっきりとした独自の世界観があって、その中で洞窟画が現代に蘇ったような神秘的でバイタリティのある作品に元気をもらいました。
作家を国籍に還元するのは良くないと思いつつも、やはり日本の良さがよく出た作品だとも感じました。「日本美術の歴史」で辻先生が日本美術の特徴の一つとしてアニミズムをあげていらっしゃいましたが、動物や自然にも魂や神様が宿っているような世界観が根底に流れていると感じました。
アニミズムの対極にあるのが、西洋の自然を超克する対象として捉える考え方だと思います。いのちあるものすべての基盤となる地球環境自体が危機に晒されている今、東洋的な世界との関わり方に多くの人が関心をもっているのではないでしょうか。そしてアニミズム的な人と自然のあり方は言葉で説明するよりも、絵画などの芸術作品を通じて伝える方がよほど心に響くと思います。
英語では「ペンは剣よりも強し」という慣用句もありますが、アートの力は美しいというだけでなく、人と人とを繋ぐ点において何ものにも代え難く素晴らしいと思います。
大学では芸術批評を専攻し、スイスに移住した際に「実用的」な学位がないために就職に苦労したこともあったのですが、振り返ってみるとアートに身を浸した大学時代は本当に贅沢だったと思います。高校までは受験勉強を中心にかなりあくせくと生きていたのですが、大学でのあの数年間が、その後の人生の全てを豊かにしてくれたように感じています。
アート万歳。人生万歳。そして何よりもアーティストのみなさま、ありがとうございます。