ネフスキーの「月と不死」
日々満ち欠けてゆく月と不死は意外な組み合わせだと思い、興味をもってネフスキーの本を手にとりました。坂本龍一さんのご著書に紹介されていたことがきっかけです。ネフスキーはロシア出身で日本に留学し、柳田國男や金田一京助と交流があった民俗・言語学者です。端正な日本語で書かれた短い「月と不死」という論文は、小さな宝石のような煌めきを感じました。
しかし、それよりもめっぽう面白かったのは解説としてまとめられれているネフスキーの伝記。同じコメントを読書メーターに投稿されている方がいらっしゃいましたが、全く同感です。この時代にこんな方が日本で暮らしていたということを知り、また伝記で紹介されるネフスキーの知的で温かく、ユーモアのある生き様に心を動かされました。
簡単に紹介すると、ニコライ・ネフスキーは1892年にロシアに生まれ、1913年に日本に留学しました。日本人女性と結婚し、1929年にロシアに帰国したものの、シベリアに送還され、若くして亡くなりました。主な業績はアイヌ・宮古島方言や西夏語の研究のようです。
解説ではネフスキーと柳田國男や金田一京助の親交があった様子や、革命後にロシアからネフスキーに届いた手紙が紹介されており、彼が友人や同僚に心から敬愛されていた様子が伝わってきました。ロシアの恩師から出された手紙に「乞食をしてでも、日本にいた方がよい」と書かれていたことも印象的でした。
そしてどこの出版社がこの本を出したのかと思ってみると、東洋文庫。決して万人向けではないこの貴重な本を出してくれたことに感謝。実は今やっている展示が面白そうで行ってみようと思っていたところなので、ご縁があるタイミングのようにも感じています。